仔犬を産ませたいと思う前に!

あなたが今一緒に暮らしている犬がいて、また、将来一緒に暮らすであろうその子に子供を産ませたいと漠然とでも考えているなら、その繁殖が本当に必要なのか、その子は子孫を残していくのに本当に相応しいのか、冷静に考えてみて下さい。
単純に「可愛い我が子に仔犬を産ませてみたい」、「ご近所でよく『子犬が出来たら私にぜひ頂戴!』と言われるから」などという軽い気持ちで仔犬を産ませるということは、とても危険なことです。
犬は生き物であり、ぬいぐるみでもおもちゃでもありません。出産は、確かに喜びもありますが、母犬にとっては生死をかけた大事業であり、もちろん人間側にとっても時間や金銭的にも大変負担が大きい事なのです。
また、産まれた仔犬達全てが健康で、五体満足に生まれてくるとは限りません。もしも身体が不自由な子が生まれたら、あなたはその仔の面倒を一生見続けることができますか?
さらに、仔犬たちが身体的に何も問題が無くても、必ず貰い手(新しい飼主)が現れるとも限らないのです。仔犬は1頭だけいればいい、残りは誰か可愛がってくれる人に譲ろう、と安易に考えていたものの、誰もその仔犬を欲しいといってくれなかったら・・・。あなたは、その仔犬たち全てを、一生育てていく自信がありますか?
母犬にとって出産は「命がけ」です。もしかしたら出産のために、あなたの大切な愛犬の命が失われる、という最悪の事態も考えておかなくてはいけません。子犬だけでも助かれば、まだ救いはありますが、親も子もダメだった、ということもありうるのです。そこまでしてでもあなたは、あなたの愛犬に仔犬を産ませたいと思いますか?また、その必要があるのでしょうか?

 

愛犬のグルーミングに来たあるお客様が、私にこんなことを聞いたのです。「うちの子、この間生理が来たから、この子を買ったペットショップで交配してもらったんだけど、仔犬って何日位で生まれるの?」私は絶句してしまいました。
仔犬が何日で生まれるのか、ということすら知らないで、交配したの?それって、どういうこと?ちょっと極端な例ではありますが、仔犬を産ませようとするなら、最低でも知っておかなくてはいけないことがあるんです。

子犬が生まれたのはいいけれど、母犬が全く子育てをしなかったために、1日家を空けていて、帰ってきたら産まれた仔犬が全て亡くなっていた、なんていう、悲しい話も聞きました。
生まれればあとは母犬が全てやってくれる、という風に思い込んでいる人が多いかもしれませんが、出産、子育てには飼い主さんの協力が無くては絶対に上手くいきません。(人間の赤ちゃんが生まれた時も、周りの人たちの協力が大切でしょう。それと同じです。)

この人たちは、犬の『命』をどんな風に考えているのでしょうか。っていうか、『命』を何だと思っているんでしょう?
飼主が何も知らない、無知なためにこんな悲劇が起こります。仔犬の命、母犬の命、それらを守るために、調べたり勉強したりする手間を省いてはいけないんです。今は、色々な愛犬雑誌が出ていますし、調べることは決して難しいことではないはずなのに。

産ませようとするあなたの責任と、産まれた仔犬全部の命を守る責任として、繁殖の意味、正しい犬種を残していきたいという姿勢を再認識していただきたいです。